普通の人の家を建てる 庶民派建築家として

「なんで大工さんは、住む人の気持ちを考えて家を作ってくれないんだ!」

そう思ったのは私が小学校に入るか入らないかぐらいの時、我が家を建て直した後のことでした。

 私が生まれた家は岡山市江並にありました。今住んでいるところと同じ場所です。今では、家の前は新岡山港となり、海とは少し離れていますが、そのころは家のすぐ前が海でした。

 子どもの頃2.JPG生まれた家は、木造平屋、トイレが離れてあるような大変古い家でした。その家を私が6歳くらいのときに、道路整備のため建て直すことになったのです。

工事は、知り合いの大工に頼みました。新しい家に住めるということで、家族みんな楽しみしていたのを子供心に覚えています。

 しかし、やっとのことで完成した家は、大変不便でした。一番問題だったのが、台所に横に、トイレがあったこと。今みたいに、水洗トイレであれば、まだ許せるのですが、昔は汲み取り便所。

おいしい食事のはずが、どうしても、トイレのにおいがしてくる 。おいしい食事は、台無しです。子どもながらも、大工さんに怒りを感じて思ったのが、冒頭の言葉です。

 こんな話は今では珍しくなりましたが、ちょっと前までは、1つの町には何人もの大工さんがいて、普通の家はそんな大工さん達が作っていました。

おそらくそんな大工さん達は家を建てることは知っていても設計や間取りという考えはあまりなかったのでしょう。

そして、住む人の生活様式の変化にもついてこれていなかった。だから結果的には住む人のことを考えていない家が出来てしまったのだろうと思います。

 しかし、そんな家に住むことになってしまった私達家族は大変でした。

昔の家.JPGのサムネール画像結局、私の家は数年後に台所の増築などをし、ようやく普通に生活できる家になったのです。

その後、成長した私は関西大学建築学科に入り、建築の道を歩き始めました。

おそらく子供の頃の経験が、そうさせたのでしょう。しかし、それにハッキリ気がついたのは、大学に入って3年が過ぎ、就職活動をしている時でした。

既にゼネコンの内定をもらっていましたが、ある先輩に「君は、何になりたかったから、建築学科に入ったんだ?」と聞かれて、自分の本当の気持ちに気がついたのです。

「子供の頃に家作りで嫌な思いをしたからこそ、私は自分で家を設計してみたい。そしてそんな経験をした自分だからこそ、住む人の気持ちを考えたいい家を造れるはずだ」

 そんな自分の気持ちに気がついた私は、結局ゼネコンの内定はけり、関西の建設事務所に就職。

さらに28歳の時に地元岡山の住宅設計事務所に入所し、建築と住宅設計の基礎を学び。

36歳の時に独立しました。

独立後も、コンスタントに仕事に依頼をいただき、今に至っていますが、私が現在手がける設計は全て一般住宅の設計です。

つまり、普通の人達が住む、普通の家の設計をしています。 そして、そんな方達のために少しでも美しく、そして住みやすい家を設計するのが、私の仕事だと思っています。

時々、私に依頼をして下さったお客様が、家族で新しい家に住める期待に胸を膨らませてニコニコされている顔を拝見していると、子供の頃の気持ちが蘇ってきます。

私の家族もそうだったな、と。そして、そんなお客様の笑顔を裏切らないことが大事だ、と改めて思うのです。

さらに、家が建った後に満足して下さった客様からお便りを頂くこともあり、それを読んでいると、設計させていただいたお客様が安心して暮らしているのを感じて、幸せな気分になります。

そんな時、こんな気分になれる住宅設計というのは、つくづくいい仕事だなーと思っています。

私も、独立と同時に、親の家の隣に、自分の家を建てました。決して大きくも立派でもない家ですが、子供の頃の自分のために建てたような家だと思っています。

普通の家を少しでも美しく、そして住みやすく、という私の気持ちのこもった設計の1つです。その自宅は事務所として、お客様にも見ていただけるようにしていますので、私の設計した家をご覧になりたい方はいつでも見学にいらして下さい。

 これからも皆様の良い家づくりのお手伝いができるよう、よりいっそう精進していきたいと思います。

小川 修市のサムネール画像

 

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